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朝起きたら寝違えで首が動かなくなっていた

 
寝違え

寝違えの原因は理解できていますか?原因を明確にすることで、改善までの方向性やスケジュールを明確化できます。

 
 
ここでは、寝違えの具体的な原因や検査、整体方法を手順でまとめました。 
 
 
 

 寝違えの原因を明確にする

 分かりやすくするために、下記の具体例に沿って書いていきます。

 
 
(来院者)
・30代 女性 SE
 
 
(主訴)
・朝起きたら首の痛みを感じ動けない
 
 
(痛み方)
・動かさなければ大丈夫だが、頭を少しでも動かすと激痛
 
・30分かけて起床し、起きた直後よりはなんとか動ける
 
・ネットで調べて、自分で首の周りをほぐしてみたり、お風呂に入って温めてみたが効果はなかった
 
 

問診:

どこが痛む?
 ・右の首の真ん中から肩甲骨にかけて
 
 
痛みの種類は?
 ・動かすとズキとして痛みを感じる
 
 
どうすると痛む?
 ・動かすと
 
 
いつから痛む?
 ・昨日の朝から痛み、病院に行って電気治療を受けたがあまり変化しなかった
 
・湿布をもらったが効果はなかった
 
 
きっかけは?
 ・起きたら痛みを感じていたが、最近肩こりが強いなとは感じていた
 
 
既往歴あります?
 ・なし
 
 
痛みの現在の状態
・変化がない
 
 
悪化要因
・睡眠
 
 
改善要因
・あまりわからない
 
 
問診では、様々な痛みの原因のヒントが隠されています。
 
 
いくつかの腰痛の原因を予測して検査していきます。
 
 
ここでは解剖学的な知識と想像力、統合力が必要になってきます。
 
 
 

 情報を整理して推測します

  • 昨日起きてから急に痛みが発生した
  • 当日は病院で電気治療を受けたが変化がなかった
  • ロキソニンを処方されたが、飲まなかったとのこと
  • 寝て起きると症状が増悪する
  • 寝違えが発生する前から肩のコリが発生していた
  • お風呂で温めても、ほぐしても変化がない

 
  
という事は 電気治療を受けたり、お風呂に入って首をほぐしてもあまり変化が感じられなかったため、筋肉だけの問題ではないことが考えられます。
 
 
問題部位を特定し施術の方針を立てます。
 
 
寝違いや腰痛など一般的に知られている症状の多くは、原因や状態が1つではなく、複数存在することが通常です。
 
 
今回の寝違えも、筋肉の問題や神経、関節など様々な原因で発生します。
 
 
そのため、まず今回の寝違いの発生原因を特定することが重要です。
 
 
発生原因により、施術内容も変化してきます。
 
 
 

チェック手順

  • 首の問題のため、まずは脳や神経に異常がないかの確認が必要
  • 手のしびれなどの付随する症状も確認します
  • 上記に異常がなければ、筋肉や関節などの力学的な問題を確認していきます。
  • 発生原因を特定し施術方針ができたら、関わっている筋肉の特定をし、関わる関節(くっついている骨と骨の場所)その筋肉の神経(筋肉に情報収集を送っている神経線維)を整理し、検証していく。

 
 

発生原因の特定

 
 
今回は、脳や神経に関しての検査では異常は見られませんでした。
 
 
神経性の問題であればこれらの検査内容に陽性反応を示します。
 
 

代表的な検査内容

 
・ディストラクションテスト
首の神経根(神経の根本)を圧迫を確認するテスト
 
陰性
 
 
・バレリュウサイン
椎骨動脈(脳にいく血管)の異常性を確認するテスト
 
陰性
 
 
 

筋肉の問題を調べていきます

 
頸部後方の筋群の過剰な緊張
 
頸部前方の斜角筋の過剰な緊張
 
頸部と背中を繋ぐ板状筋の過剰な緊張
 
 
 

筋肉の付着場所

 
・頸椎ー胸椎 →①板状筋
・頸椎ー肋骨 →②斜角筋
ここでは解剖用語を使うと解りにくくなるので絵を見てください
 
 
 

①板状筋の作用
・首の伸展・側屈
 
神経支配
 →頸神経後枝( C 2~ C 5)
 
 
 
 

②斜角筋の作用
・頸部の屈曲
・頸部の前方の安定性
 
神経支配
 斜角筋
 →腕神経叢( C 4~ C 7)
 
 
 
今回過剰に緊張している筋肉は首の前後ともになります。
 
 
そのため、過剰に緊張している筋肉は首を保護している可能性があります。
 
 
これを筋肉の防御反応といいます。
 
 
これが生じている部位は関節が炎症や過剰に動きすぎている可能性が非常に高いです。
 
 
一般的なイメージでは関節が動きすぎるというのはなかなか理解が難しいと思いますが、実際関節には3種類の状態があります。
 
 
①関節可動域の過剰:
ハイパーモビリティ(+)
 
②関節可動域の正常:( ± 0)
 
③関節可動域の減少:
ハイポモビリティ( )←矯正できます
 
 
 
関節の可動域には過小と過剰が存在します。
 
 
どちらも正常範囲を逸脱すると、関節自体の痛みや、筋肉、神経に影響を与えます。
 
 
これらを見極めて、神経や筋肉の問題を複合的に考え、調整していくのが、カイロプラクティック施術になります。
 
 
 

検証

では、今回のケースが本当に頸部の関節可動域が過剰に動作していることが原因で発生しているのかを検証をしましょう。
 
 
検証にはカロプラクティックの可動触診検査を使用していきます。
 
 
関節のチェック

  • ・頸椎の1番の左後方変位(
  • ・頸椎3番から4番のハイパーモビリティ(+) 圧痛有
  • ・頸椎7番の左後方変位(
  • ・胸椎3番、5番の左後方変位(

 
 
上記の検査結果は難しく見えますが、簡単に説明すると、
 
 
首の関節は7個存在し、
 
 
上(1、2)中(3、4、5)下(6、7)に分類することができます。
 
 
今回の検査では上部が()、中部が(+)、下部が()その下の背中が()になっています。
 
 
つまり、首の中間部位の関節可動域が過剰になっていることで、それに隣接する関節の可動域が過小になってしまっているのです。
 
 
 
また、過剰に緊張していた斜角筋や板状筋などの筋肉は頸椎の中部から付着する筋肉であるため、過剰に緊張することで、頸部の安定性を保っていたのです。
 
 
 
このような反応を代償行為と言います。問題のある部位を隣接する組織が代償的に機能することで、なんとか状態を一定に保とうとする反応です。
 
 
 

まとめ

 
  このような検査結果から、今回の寝違えは頸部関節の中部である頸椎3番及び4番の関節が過剰に動きすぎることにより発生する関節痛が原因であると考えられました。
 
 
そのため、まず、上下の関節の調整を行い、中部の過剰な動きを抑制していきました。特に背中の可動域を調整すると、首を動かした時の痛みがかなり減少していました。
 
 
首の動作は首だけではなく、背中の可動域に補助されています、そのため、背中の可動域が低下したことで、首が必要以上に動かなければいけなくなったのが原因だと考えられます。
 
 
寝違えが発生する前に肩のコリ感が生じていたのはこの関係性です。
 
 
初回の施術で動作できる可動域が増大し、2日後に2回目の施術を行いました。
 
 
2回目の施術時には最大可動域に首を動かしても痛みは発生していませんでした。
 
 
まだ背中の関節の可動域に問題が少し残るため、3回目の施術を5日後に行い、その後はメンテナンスに移行しています。
 
 
関節が安定性も取り戻すのには、調整した位置に2週間の保持が必要になります。これは脳が関節の位置情報を管理しているためです。
 
 
脳は今までの位置に関節を戻そうとすることから、施術後関節がその状態を維持できるのは3日~5日になりますので、安定するまでは、10日間で3回程度の施術が必要になります。
 
 
 
 

注意事項

 
間違っても今回のケースでは痛いからと言って首の中部の矯正を行ってはいけません。痛い部位が全て矯正箇所ではありません。
 
 
正しいカイロプラクティック施術ではモーションパルペーション(関節の動的な可動域検査)などの検査を複合的に用いて、必要な施術箇所を決定してから矯正を行います。
 
 
無資格の施術者や整骨院の先生などがたまに無理やり捻って「ボキボキ」っという音を鳴らして満足しているのを見ますが、実は非常に危険な行為ですし、カイロプラクティックの矯正とは目的が似て非なる行為です。
 
 
特に首は全身を支配する神経の大元が存在しますので、たかが寝違いやたかが首の痛みと言って、安易にマッサージや電気を行わないよう注意してください。
 
 
 
カイロプラクティックの施術だけでなく、施術者が適切な教育を受け基礎医学を理解していることが非常に重要です。
 
 
施術を受ける側にも事前に確認しなければいけないことです。
 
 
 

判断をする上で必要な確認すべき2つを挙げておきます。

 

  • ・国家資格を持っている(柔道整復師、指圧師・あん摩マッサージ指圧師)
  • ・学位がある(応用理学士・カイロプラクティック理学士)

 
 

【ロキソニン(痛み止め)の服用に関して】

日本人は特に痛みに強い傾向があり、痛みを我慢しすぎてしまう傾向にあります。
 
 
しかし、痛みを我慢しすぎることで、それを避けようと姿勢が崩れてしまい、より改善しにくい状態に陥ってしまうことがあります。
 
 
これを『逃避姿勢』と言います。
 
 
逃避姿勢は改善しにくくなるだけではなく、症状を悪化させる危険性がありますので、症状が発生してから施術を受けるまでに時間がかかるようであれば、早めにロキソニンなどの痛み止めの服用を推奨します。
 
 
これはペインコントロールといい、日本ではまだまだ認知が進んでいない考え方です。
 
 
痛み止めを常用したり、濫用したりすることは正しいことではありませんが、正しい利用をすることで、症状の改善がより容易になる場合があります。
 
 
ロキソニンなどの痛み止めの使用のタイミングなどがご不明な場合は当院にご相談ください。